「消防署員のための手話ビデオ」(抜粋)

「消防署員のための手話ビデオ」について

 

■「聴覚障害者が安心して医療を受けられる環境づくり(トヨタ財団市民活動助成)」活動 

 1983(昭和58)年、松本市市民向け集団健診受診呼びかけのチラシに「・歩行困難な人 ・妊娠している可能性のある人 ・耳が聞こえない人 受診をご遠慮ください。」と記載されていました。支援協会の前身である2団体が松本市に対して交渉をおこない、その結果、「耳が聞こえない人」が削除されることになりました。

 しかし、聴覚障害者の手話通訳者同伴での受診にはさまざまな課題があり、松本市や松本市医師会との話し合いを重ねて、1985(昭和60)年に『聴覚障害者集団健診(※①)』実施にこぎつけました。

 しかし、胃部レントゲン撮影時の問題や医療機関側の聴覚障害者に対する理解不足等、課題は山積でした。これらを解決するために

1994(平成6)年、上記の2団体が「松本医療プロジェクト」を立ち上げて、トヨタ財団市民活動助成に応募しました。 

 1995(平成7)年、トヨタ財団市民活動助成を得て「聴覚障害者が安心して医療を受けられる環境づくり」の活動を開始しました。まず、医療に関するアンケート調査をおこないました。対象は、医療機関と手話通訳者・要約筆記者、聴覚障害者でした。医療機関と手話通訳者・要約筆記者に対してはアンケート用紙に記入の上返送していただく方法で、聴覚障害者に対しては対面方式(手話で質問して手話で答えていただく方法)でした。その結果、医療関係者向けのパンフレット・ビデオ作成、福祉マップ作成、松本市・松本市医師会・松本広域消防局との医療に関する懇談会開催等をおこなう必要があることが明らかになりました。(医療関係者向けのビデオについては、こちらをご覧ください。☞

 1995(平成7)年10月、松本市医師会、松本広域消防局、松本市、長野県松本地方事務所の担当者に出席していただいて、医療に関する懇談会を開催しました。アンケート調査の結果を報告し、緊急時の連絡方法等を提起しました。いち早く取り組んでいただいたのが松本広域消防局で、「聴覚障害者緊急通報FAXシステム」を作っていただき、現在のWEB119通報システム(※②)につながりました。

 

■「消防・医療関係者への聴覚障害者に対する理解と手話の普及事業(社会福祉医療事業団助成)」活動 

 医療機関側の聴覚障害者問題に対する理解不足の問題については、医療関係者向けのパンフレット・ビデオ(※③)を作成しましたが、それだけでは足りない、もっと理解していただく活動、手話普及の活動が必要という声が高まりました。

 医療関係者向けの手話講習会を開く必要があるものの、まず医療関係者向けのテキストが必要であり、また開催等にも費用がかかるということで、1997(平成9)年、社会福祉医療事業団の助成を申請しました。翌年4月、「消防・医療関係者への聴覚障害者に対する理解と手話の普及事業」の活動を開始しました。消防署員・医療関係者向けの『手話テキスト』は、本郷消防署、イラストレーター、その他多くの方々の協力を得て作成し、松本市内の各病院・松本圏域の各消防署で手話講習会を開催させていただきました。深く感謝申し上げます。

 

■「ビデオ版『手話テキスト』作製事業(松本ライオンズクラブ助成)」活動 

 消防・医療関係者の皆さまは本当に多忙でした。しかし並々ならぬ学習意欲をお持ちで、その意欲に何とか応えたいと考えたのが『手話テキスト』のビデオ版でした。2002(平成14)年7月、松本ライオンズクラブ様より助成を受けて、「消防署員のための手話ビデオ」のタイトルでビデオを作製しました(2003年2月完成)。 

 ここに掲載しましたのは手話表現の課題文ごとの動画です。ぜひご覧ください。 

 ※①令和2年現在、「聴覚障害者集団健診」は実施されていません。

 聴覚障害者が受診日や医療機関を選択し、手話通訳者・要約筆記者同伴で健診を受けられるようになっています。

※②WEB119通報システム

 言語及び聴覚障害者の方が、携帯電話のインターネット機能とGPS機能を活用して、火災や救急等の災害通報をすることができるサービスです(事前登録が必要です)。(「松本市障害者福祉制度のあらまし」より)

※③パンフレット「聴覚障害者が安心して医療を受けられるための環境づくり よりよい医療をめざして」 ビデオ「よりよい医療をめざして」